今回のバンコク旅にこちらも持って行ってました。
お誕生日に頂いた「食堂かたつむり」がとても好きだったので。
蝶々喃々もまた作者のとても優しく丁寧に描き出される文章がじわじわと心にしみてくる作品。
たくさんの作家がいる中でいままでこのような人には出会ったことがないなぁと思うのです。とにかくやさしい。やさしすぎるといっても過言じゃないくらい、淡々と丁寧に日々の生活というものをあぶりだすことに成功しています。
わたしは分からないながらも、着物や食べることが好きなので、具体的に表現される店の名前や着物の数々、そして関わってくる人々との毎日にふと、まるで自分がそこにいるかのような感覚に襲われるのです。
そして食堂カタツムリとの比較でいうならば、食を通して生きることの意味を探す、再定義するというテーマもまたこの作者の特徴だと思うのです。
食べることも暮らすこともまた「生きる」ことで、誰かを愛することもまた生きること。
前回は食を通して共存する人生がテーマだったけれど、今回はそこに不倫の要素が入ってきてちょっぴり複雑です。けれどわたしは作者がひとつだけのテーマを選択しなかったことは挑戦だったのかなぁと思っています。
静かに流れるような「小川糸」さんは地味だけれど、個性的な作家さんだといえるでしょうね。
とにかく優しい気持ちにさせてくれる作品のひとつです。